NMNによる運動機能への影響

公開:2024年03月11日
NMNによる運動機能への影響

NMNには、抗老化作用だけでなく、脂肪燃焼作用や睡眠の質を向上させる作用などさまざまな働きがあると期待されています。今回紹介する論文は、NMNのサプリメントがヒトの運動機能へ与える影響を明らかにした報告で、Journal of the International Society of Sports Nutritionに掲載されたものです。

1.NMNと運動機能の関係

最初にNMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)が注目されたのは、動物を対象とした研究で、老化を抑える効果が認められたからです。動物と同様に、ヒトは高齢になると身体の中のNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)とよばれる物質が低下し、老化が進むと考えられています。NMNを飲むと、すぐに腸内でNADに変換されて老化を抑えるといわれています。一方で、NMNは抗老化作用だけでなく、脂肪燃焼の促進や睡眠の質の向上、倦怠感の軽減などの効果を期待できることがわかってきました。

NMNの運動機能への影響としては、体力の向上や筋力の維持、疲労回復などの効果が期待できるといわれています。そのため、スポーツ選手やフィットネス愛好家のなかには、トレーニングの効果を高め、運動機能を向上させるための栄養素としてNMNを摂取している人もいるそうです。

2.NMNがアマチュアランナーの有酸素能力を強化した

マウスやラットなどのげっ歯類を対象とした研究では、運動トレーニングをしながらNMNを補給すると、相乗効果があることが明らかになっています。

2021年に中国のグループが発表した研究では、アマチュアランナーを対象に、NMNと運動トレーニングの相乗効果を評価するために6週間の無作為化プラセボ対照二重盲検試験(RCT)を実施しました。

具体的には、健康な27~50歳のアマチュアランナー48名が無作為に4つのグループに分けられ、NMN低容量グループは1日300㎎、NMN中容量グループは1日600㎎、NMN高容量グループは1日1200㎎のNMN、残りのグループはプラセボをそれぞれ6週間内服しました。プラセボとは、偽物の薬のことで、何も含まれていません。研究に参加した人は、自分がNMNを内服しているか、プラセボを内服しているかはわからないようになっています。各グループは、10人の男性参加者と2人の女性参加者で構成されていました。各トレーニングの時間は40~60分で、週に5~6回のトレーニングを行いました。

ランナーの有酸素能力を評価するために、研究開始前と開始後6週間に心肺機能検査を行ったところ、NMNを服用していないグループ(プラセボグループ)のランナーに比べて、毎日NMNを服用しているグループのランナーは有酸素能力が向上することが明らかになりました。NMNの服用量による違いを見てみると、300㎎よりも600㎎、1200㎎の中~高容量グループにおいて、より顕著に有酸素能力が増加しました。有酸素能力とは、運動中に酸素を取り込み、エネルギーを作り出す能力を意味します。有酸素能力が高いと長時間にわたって運動をすることができます。また、どのグループにおいても副作用は認められなかったということです。

今回の研究によって、NMNはヒトにおいても運動トレーニング中の有酸素能力を高めることがわかりました。有酸素能力が高まるのは、筋肉の酸素利用が強化されるからだと考えられています。

研究グループは、トレーニングの成績向上のための手段の1つとして、トレーニング中のNMN摂取が有効なのではないかと考えています。

今回の研究では、対象となっている人数が48名と少ないため、今後より多くの人数を対象にした研究でNMNの有酸素能力に対する効果が検証されることが期待されます。

3.まとめ

中国の研究チームが、ヒトにおいてもNMNをトレーニング中に服用すると有酸素能力を高めることを明らかにしました。トレーニング中のNMN摂取は、トレーニングの成績向上に役立つかもしれません。NMNに関する今後のさらなる研究の発展に期待したいものです。

参照論文
Nicotinamide mononucleotide supplementation enhances aerobic capacity in amateur runners : a randomized, double-blind study.
Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2021 Jul 08; 18 (1): 54
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34238308/

この記事を執筆した専門家

医学博士大塚真紀