用語解説
公開:2023年05月11日目次
NMN
NMNは、ビタミンB3から生成されて体内に存在する物質で、細胞の代謝に欠かせない補酵素であるNADの生成に関与しています。NADは細胞の若返りに必要と言われていますが、年齢とともに減少していくため、NMNのサプリメント摂取は細胞の若返り効果を期待されています。最近の研究により、NMNは老化や病気の予防に役立つことが示唆されています。
NAD
体内でエネルギーを作り出すために非常に重要な役割を果たします。NADは、食物から摂取したビタミンB3から生成されるNMNを介して腸や肝臓で生成されます。NADは、体内でエネルギーを生み出すために必要で、細胞内の反応を促進する役割を果たします。NAD不足は、老化に伴う不調や病気の原因となる可能性があります。したがって、適切にビタミンB3を摂取することで、NADの生成を促進することが重要になります。
NR
NRとNMNは、私たちの体内に存在する2つの異なるタイプの分子で、どちらもエネルギー産生と細胞の健康に関与しています。
NRはニコチンアミドリボシドの略で、ビタミンB3の一種です。NRは、細胞にニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を生成し、エネルギー産生と他の細胞プロセスに不可欠です。
NMNは細胞内でNADに変換される分子です。NMNは、DNA修復、遺伝子発現、エネルギー代謝などのプロセスに関与しています。
NRは、吸収された後にNMNに変換され、直接細胞内に入りNADに変換されます。一方、NMNはトランスポーターと呼ばれる運搬物質によって細胞内へ運ばれ、NADが生成されます。
NAMPT
ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(Nicotinamide phosphoribosyltransferase)の略称で、人間の細胞内で生成される酵素の一種です。これは、生体内で重要な役割を果たします。NAMPTは、体内でエネルギーを生成するプロセスに関わっている他、免疫系の正常な機能を維持することも知られています。また、NAMPTは、糖尿病などの病気の治療にも使用されています。DNAの修復や細胞シグナル伝達など、体内の多くの重要なプロセスに関与するNADを、細胞が生成するのを助ける働きをします。
サーチュイン遺伝子
サーチュイン遺伝子は、私たちの体に存在する特別な遺伝子のひとつで、長寿や健康に関係があるとされています。この遺伝子が働くことで、細胞の老化を遅らせたり、体の炎症反応を抑制できるとされています。
サーチュイン遺伝子の中でもSIR2遺伝子は有名ですが、NMNはそれを含むSIR1~SIR7の全ての遺伝子を活性化させることが研究結果で分かってきています。
NMNを口から摂取すると体内、主に腸でNADという物質に変換されますが、NADの濃度が高いとサーチュイン遺伝子が活性化する確率が高まります。
基礎代謝
基礎代謝とは、人が生きていく上で必要な最低限のエネルギーであり、呼吸や心拍、体温維持などの身体機能を維持するために必要です。基礎代謝は、体の大きさや性別、年齢、筋肉量などによって異なります。
NMNは、体内でエネルギーを生成するプロセスをサポートし、食べたものからエネルギーを生成するプロセスも含まれます。もし、人間の体がより効率的にエネルギーを生成することができれば、そのエネルギーの一部を自己修復に使うことができ、加齢に伴う健康障害の予防につながる可能性があるようです。
GMP認証
Good Manufacturing Practiceの略で、医薬品や食品などにおいて、お客様が受け取る製品が安全で、一貫した品質と安全基準で製造されていることを保証します。GMP認証の取得には、企業は厳格な製造手順の順守、清潔な施設の維持、従業員の教育、サンプルや製造・品質等の記録のすべてを文書化していることの証明、などが必要になります。
cGMP認証
current Good Manufacturing Practiceの略で、アメリカでの、医薬品、食品、医療機器などの製造における品質管理基準です。FDA(米国食品医薬品局)が管理しています。製造工程を細かく管理することで、製品が常に安定して高品質であることを目指しています。cGMP認証を受けた企業は、製造プロセスで一定の基準を満たしていることになり、監査機関から審査を受けた証明書を取得できます。この認証を得ることで、消費者に安心・安全な製品を提供できます。
点滴療法
NMNは、体内でNADを作り出し、細胞のエネルギーを作ったり、ストレスに強くなる働きがあります。年齢を重ねるごとに、体内でNADを作る能力は低下していきます。点滴療法は、NMNを直接血液中に注入する方法で、より早く効果を高めようとしています。
しかし、NMNの主な働きは腸内での吸収後、血液循環を通じて細胞内に届けられます。つまり、NMNは腸内でNADに変換されてから血管に入るため、NMNを直接血管に注射しても効果があるとは言えないのです。NMNが身体に有益な効果をもたらすには、この変換過程が必要です。
NMNの点滴療法に関しては、その安全性や効果についてはまだ研究中であり、今のところは正式な承認が得られていません。また、過剰摂取した場合や副作用のリスクも指摘されています。従って、医療行為として行われる場合には、医師の指導のもと、十分な情報提供とリスク管理が必要です。
化学合成法
NMNを合成するには、ニコチンアミドとリボースという2つの物質を使います。これらを別々に溶かし、一定の温度で混ぜ合わせて反応させます。すると、これらが結合してNMNが完成します。
この反応は比較的簡単に起こりますが、高い純度で合成するには工程が多く、手間がかかります。また、安全性にも注意が必要です。化学合成法はNMNを生産するのに安価な方法のため、コストを抑えたい場合に用いられます。化学合成されたものは製造過程で危険な化学物質が紛れ込むリスクが高く、マウスに与えたテストでは死亡した例もあります。
酵母発酵法
酵母を使用して、NMNを合成する方法です。酵母は、ぶどう糖など、さまざまな炭素源、窒素源、ミネラル源を含む培地を使用して培養されます。培養温度やpH等の条件は、使用する酵母菌株に合わせて設定します。菌体培養後に、酵母エキスの抽出を行います。菌体培養後に抽出を行うことで、NMNの含量を高める方法です。生産するコストは高くなりますが、安全にNMNを精製できます。
インスリン感受性とインスリン抵抗性
インスリン感受性とは、細胞がインスリンに対して反応しやすい状態を指し、インスリン抵抗性とは、細胞がインスリンに対して反応しにくい状態を指します。つまり、インスリン感受性が高い場合は、インスリンが効率的に働き、血糖値が正常に保たれますが、インスリン抵抗性が高い場合はインスリンが効かず、高血糖や糖尿病のリスクが高くなります。
ワシントン大学の今井眞一郎の論文によると、通常のマウスも人間と同様に加齢によって太りやすくなる傾向がありますが、マウスへNMNを1年間投与した結果、体重の増加を抑えることができました。さらにインスリン抵抗性と脂質プロファイルが改善されたという結果が得られています。
HbA1c
HbA1cとは、血液中の赤血球内のタンパク質の一種で、私たちの体が糖やグルコースをどれだけうまく調節できているかが分かります。HbA1cは、過去数カ月間の血糖値の管理状態を確認でき、HbA1cの値が常に高い場合は、糖尿病などの疑いもあります。
一方、NMNは、インスリン感受性の向上や炎症の抑制など、健康に役立つ可能性のある分子であることが分かっています。インスリン感受性の向上は、血液中のグルコースの調節がうまくいっているということになります。
インスリン抵抗指数(HOMA-R)
インスリン抵抗性指数は、血糖値をコントロールするインスリンに対する体の反応性の高さを測定するものです。体がインスリンに対して抵抗性を示すようになると、ブドウ糖を効果的にエネルギーとして利用できなくなり、血液中にブドウ糖が蓄積されるようになります。これにより、2型糖尿病の発症リスクが高まります。
NMNは、インスリン抵抗性を低下させることが知られています。つまり、NMNは体内でインスリンをより効果的に使うことができ、血糖値をコントロールするので、2型糖尿病の予防につながると考えられます。
具体的に、HOMA-Rは以下の式で算出されます。
HOMA-R = 空腹時血糖値 × 空腹時インスリン値 ÷ 405
HOMA-Rの値が高いほど、インスリン抵抗性が高くなっている可能性があります。1.6以下が正常で、2.5以上はインスリン抵抗性ありとなります。
テロメア
染色体の末端にあるDNAの繰り返し配列で、細胞分裂による染色体の短縮を防ぐ役割を持ちます。しかし、細胞分裂が繰り返されるたびに短くなります。一定の長さ以下になると細胞分裂ができなくなり、細胞老化や細胞死を引き起こします。健康的な生活習慣や運動、ストレスの管理などは、テロメアの短縮を遅らせることができると言われています。また、サーチュイン遺伝子の活性化がテロメアの長さに影響を与えることも報告されています。
ミトコンドリア
ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを作り出します。ところが、年齢を重ねるごとにミトコンドリアの働きが低下することが知られています。これが老化の原因の一つです。エネルギー産生が低下し、フリーラジカルと呼ばれる有害物質の生産が増加します。このフリーラジカルは細胞を傷つけ、がんやアルツハイマー病などの病気の原因となります。最近の研究では、ミトコンドリアを活性化させることで老化を遅らせることが可能であることが分かってきました。運動、健康的な食事、ストレスの軽減は、フリーラジカルを軽減し、ミトコンドリアの機能をより長く維持するのに役立ちます。
賦形剤(ふけいざい)
サプリメントに含まれるNMNは粉末状態で加工されているため、製造過程で凝集や沈降、粘着などが生じてしまいます。そこで、賦形剤と呼ばれる特別な成分が添加されます。サプリメントに用いられる賦形剤には、セルロース誘導体、澱粉、ゼラチン、乳糖、ポリ酸などがあります。賦形剤はサプリメントの製造過程で、NMNを適切な形状や大きさ、重さに仕上げる役割を担っています。中には原料の純度99%などの表記があっても、サプリメントとしてカプセルに入れる段階でほとんどが賦形剤で、NMNがほとんど入っていない製品も存在しています。
造粒工程
NMNの造粒工程は、NMNの顆粒を作るために行われる工程です。まず、NMNを原料とする溶液を作ります。この溶液に、乾燥剤を加えて水分を除去し、純粋なNMNの結晶を作り出します。次に、このNMNの結晶を砕いて細かい顆粒にし、製品としてパッケージングします。
NMNの原料は99%が中国産ですが、日本国内で原料を造粒するだけで日本産と表記することが可能になっています。法律上は問題ありませんが、産地が変わってしまうことを知らないまま、多くのユーザーは購入することになります。
- この記事の執筆
NMN総合研究所編集部